『時代華語』台湾で使われている新しい中国語のテキスト(第4冊)レビュー

2023/11/04

テキスト 文法

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台湾の中国語の王道テキストといえば『實用視聽華語』と『當代中文課程』。

これらは多くの民間の語学学校、そして大学の語学センターで使用される標準的なテキストです。

私もこれまでに、独学で『實用視聽華語』1と2を、そして半年間だけ通った語学学校では『當代中文課程』の4(短文だけコピーして使用)と5(途中まで)を使って勉強しました。

しかし、実は最近、これらのテキスト以外に、多くの語学学校でも使用されるようになった新しいテキストがあります。それが今回の記事で紹介する『時代華語』です。

「時代華語」はどんなテキスト?

『實用視聽華語』は1994年、『當代中文課程』は2015年に出版されましたが、『時代華語』は第1冊目の初版が2019年と、割と新しい中国語テキストです。

全国の7つの大学(淡江大學,輔仁大學,文藻外語大學,慈濟大學,國立臺北教育大學,中國文化大學,逢甲大學)の語学センターが共同で編集しました。

台湾の華語試験である華語文能力測驗(TOCFL)の出題語彙8000単語にも対応しています。

テキストは全7冊で構成されていますが、2019年に第1冊目が出版されてから2021年に第4冊が出版されたのを最後に、2023年10月現在、第5冊はまだ書店には並んでいません。

しかし上記の大学の中国語センターの紹介では授業で使用するテキストの紹介に5~7冊目も記載されているので、もしかしたらまだ市販されていないだけで7大学の語学センターではすでに試用版などが使用されているという可能性もあります。

 *追記:2023年11月に時代華語5の試教版が出版されました。

手元にある第4冊の「主編的話」によると、この第4冊の作成が始まったのが2017年、2019年に試作版の完成、それから審査や試作版のフィードバックを経て、2021年に正式に出版されたそうです。

時代華語1〜7冊のレベルは以下の通りです。

(各学校の語学センターのホームページ参照)


第1冊
 ・A1/中検準4級/HSK1、2級

第2冊
 ・A1、2/中検4級/HSK3級

第3冊
・A2、B1/中検3級/HSK4級

第4冊
・B1、B2/中検3、2級/HSK5級

第5冊
・B2、C1/中検2級/HSK6級

第6冊
・C1、C2/中検準1級/

第7冊
・C2/中検1級/

時代華語 第4冊

今手元にあるのが第4冊なので、こちらを使ってレビューしてみようと思います。



レベル

第4冊のテキストはCEFRのB2レベルで、TOCFLのB2(高階級)にあたります。

収録されている課は16、新出単語は1371語です。

全16課の学習を終えると、おおよそ中検の2級、またはHSKの6級くらいのレベルに達する見込みです。また、第4冊で学習する新出単語は、ほとんどがTOCFLのB1からC1のレベル。そのなかの約8割がTOCFLのB2のレベルをカバーしており、C1の単語も少しですが含まれています。

第4冊の学習にかける時間ですが、テキストの説明によると、標準で12時間から15時間かけて1つの課を学習するようです。

つまり、1冊を終わらせるのに192時間から240時間かかることになります。

クラス授業か個人レッスンかでかかる時間は変わってくると思いますが、個人レッスンや独学の学習者は1冊の学習にそこまで時間はかからないと思います。個人差はあると思いますが、とりあえず団体レッスンの半分の時間を目安に進めてみてはいかがでしょうか。

構成

それぞれの課は、対話と短文の2つの本文で構成されています。そしてそれぞれの本文に、語彙、文法練習、本文理解の問題があります。


時代華語


時代華語


新しい語彙にはピンインと英語の訳がついていますが、本文や語彙の例文にはピンインや注音はありません。以前使ったことのある『當代中文課程5』も新出語彙はピンインだけでしたが、『實用視聽華語』は注音とピンインのどちらも表記されていました。

本文については、対話も短文も簡体字で書かれたページが別に用意されています。台湾に住んでいても仕事などで簡体字を使用する環境にある方は多いと思うので、本文だけでも簡体字があるのはとても良いことだと思います。


時代華語

なお、各練習問題には解答はありません。

別冊の練習問題

作業本と呼ばれる練習問題集が別冊で購入できます。

第4冊の作業本の構成は、

①会話を聞いて正しい内容の文を選択する問題
②空欄に当てはまる正しい語彙を選択する問題
③文法を使って自由に文を作る問題
④TOCFLに合わせた聴解問題
⑤TOCFLに合わせた読解問題
⑥作文

となっています。

こちらも解答は収録されていないので、中国語の先生や台湾の家族などの協力者が必要になるかと思います。教師用の手引きを購入すれば選択問題と文法の模範解答は確認することができますが、作文はやはり協力者に添削をお願いするしかなさそうです。


時代華語


音声

時代華語の音声は、テキストに表示されているQRコードを読み取って再生、またはダウンロードするタイプのものです。

スマホにダウンロードせずに、表示だけさせて音声を聞くこともできますし、もし外出先でも音声を聞きたいなら、オフラインでも再生できるようにダウンロードしておくこともできます。

ダウンロードする場合、1つの音声ファイルが20Mくらいになるので、スマホの容量が気になる方はダウンロードせずに再生を選んだほうがいいかもしれません。

『當代中文課程』は国立台湾師範大学の國語教學中心ホームページから音声がダウンロードできます。スマホの場合、圧縮ファイルを解凍するアプリが必要になります。『實用視聽華語』はMP3が付属します。

※『當代中文課程』の第2、3、4冊に改訂版が出ています。こちらはテキストのQRコードを読み取るか、直接YouTubeで検索すると音声が聞けます。

おすすめポイント

内容が新しい

以前使ったことのある『實用視聽華語』は、内容も言い回しもイラストも古めかしい印象でしたが、『時代華語』はわたしたちの今の生活にあった内容になっています。

中でも第4冊は2021年出版ということもあり、 銀行やオンラインショッピングの内容にしても「包裹」「註冊」「 取貨」「 拍賣」「 海關」「代購」「 成本」「跨行」「匯款」「抽號機」など、今の生活には欠かせない単語が出てきます。


大人目線の話が面白い

個人的に面白いなと思ったのが、学生目線ではなく子を持つ大人の内容も含まれていることです。

今まで使用してきたテキストは、主に台湾に留学している学生を中心に話が進んでいましたが、このテキストの第4課は、第1課から大人同士の会話でした。

子供に自分の友達を紹介するシーンで「快點跟叔叔打個招呼。」「叔叔好。」という文を見た時に、このテキストは台湾での生活習慣も学べるいいテキストだと感じました。

台湾では、年上の人を紹介するときは年下の人に「快點叫〇〇」などということが多いです。

これは決して子供に対して言われることではなく、私も主人も両親に歳上の親戚を紹介されたときには必ず「趕快叫舅公。」などど言われ、「舅公好。」と挨拶をします。直訳すれば「早く〇〇と呼びなさい。」ですが、特に急かしているわけではなく、日本語の「さあ、ご挨拶して」みたいな感じです。

留学生という立場のうちは、あまりこういったシーンに出くわすことはないかもしれませんが、台湾籍の方と家庭を持つと必ずこの会話が出てくるので、たった1つの挨拶文ですがすごく考えて作られているなと感心しました。

他にも、高校の先生同士の話、高校生の子の進路を心配する親同士の話なども、同じ子を持つ親として興味深かったですし、癌患者を見舞う際に「你還好嗎?」と言ったり、手術をした人に「你現在的心情,我都了解。」「假如是我,一定沒辦法。」などと言うのは良くないという話も参考になりました。

今のところは第4冊まで出版されていますが、第5冊が出版されたらぜひまた購入しようと思います。

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大喬(ダーチャオ)です。 台湾に来て20年。台湾人の夫、娘と3人で暮らしています。

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